
子どもの泌尿器
子どもの泌尿器
子どもの泌尿器は、大人と同様で腎臓・尿管・膀胱・尿道といった尿の生成・排尿に関係する臓器や、前立腺・陰茎・精巣・精巣上体といった男性特有の臓器に加えて、子宮・膣などの女性特有の臓器も含めた内外性器を対象としています。
成長過程にあるため、大人とは異なる病気を引き起こすことがあります。
こんな痛みや症状でお困りではないですか?
子どもは自分の体に異変が生じても、言葉で上手に伝えることができないことが多々あります。
親御さんが日常生活において違和感を抱く場合は、些細なことでもお気軽にご相談ください。
2~3歳になると、尿をまとめてしっかり出すことが可能になり、1日の排尿回数が6~8回程度になります。そのころからトイレトレーニングを始めるのが平均的で、オムツを外す時間を増やしトイレでの排尿を練習します。個人差はありますが、早ければ3歳で完成する子もいれば、就学年齢(7歳)になってもまだ完成しない子もいます。就学年齢になってもまだ、昼間のおもらしが続いている場合は、先天的(生まれつき)の病気や泌尿器奇形を伴う場合があります。
睡眠中に無意識に尿漏れしてしまう症状で、5歳を過ぎて1ヶ月に1回以上の頻度で、3ヶ月以上続く場合を夜尿症と定義されています。7歳児における夜尿症の有病率は10%程度で、0.5〜数%は解消しないまま成人に至るといわれています。夜尿症の原因は、親御さんの育て方やお子さんの性格の問題ではありません。
治療としてはまず生活指導と行動療法を行っていきます。生活指導としては、利尿作用のないカフェインレスの飲み物にしたり、昼間は規則正しくトイレに行ったり、就寝までの2〜3時間は水分摂取を控えるようにします。就寝前にトイレに行く習慣をつけることも予防につながります。
行動療法としては、アラーム療法が有効です。薬物治療としては、抗利尿ホルモン薬があります。
包茎とは、亀頭が包皮で被われて亀頭が露出していない状態のことです。生まれたばかりの男児は全くむけない状態が正常です。4~5歳になると亀頭が見えるまでむけることも多いですが、ほとんどの男性では陰茎が成人のサイズになった段階で亀頭を露出できるようになります。
成人後の真性包茎は性交渉への影響や陰茎がんのリスクも考慮し手術が必要です。
繰り返す包皮炎や、バルーンニング(尿がスムーズにでず包皮が膨らむ)を認めた場合には手術療法が必要な場合があります。
包皮をむいた状態からもとに戻せなくなり、亀頭への血流障害で激しい痛みを伴うことがあり、早急に治療介入が必要です。場合により緊急手術となることがあります。
普段包茎の状態のお子さんの場合、お風呂等で洗った後に、包皮をむいたままの状態にしない(もとの包茎の状態に戻す)ことがとても大切です。
包皮と亀頭の炎症によるもので、3歳前後から亀頭や包皮が赤く腫れて痛がるといった症状が出現することがあります。
多くのお子さんが包茎状態のため、包皮と亀頭の間に垢が溜まり、湿潤であるため細菌が繁殖し易く、しばしば炎症を起こします。
治療は、抗菌薬含有の軟膏を使用します。炎症が強い場合は、抗菌薬の内服も併せて行います。
通常は亀頭先端まで尿道が形成されますが、先天的(生まれつき)に尿道形成不全のため、亀頭先端まで尿道がなく陰茎の腹側(裏側)に尿道口(尿道の出口)がある状態を尿道下裂といいます。子供の亀頭が包皮で被われていることがほとんどですが、典型的な尿道下裂では包皮が陰茎の背側(表側)にフード状になっていて亀頭がみえていることが多いです。
尿道口の位置によっては、立位排尿(立ちション)が困難となることがあり、その場合は手術を行う必要があります。
鼠径ヘルニアは一般的には脱腸と呼ばれています。小児の1~5%に発生するといわれており、女児に比べて男児のほうが多く、小児手術の中で最も頻度の高い疾患の一つです。症状は、鼠径部から陰部にかけて膨らみが出現します。
1歳未満の鼠径ヘルニアは自然に治ることもあるといわれていますが、自然に治ることを過度に期待して手術時期を遅らすことは得策ではありません。
陰嚢水腫は、軽度の鼠径ヘルニアの場合を示し、脱腸状態とはならず、液体(腹水)のみが陰嚢内に流れ込む状態のことです。陰嚢の内に水がたまり、陰嚢が大きく膨れる状態で、基本的には痛みはありません。
ヘルニア門(出口)が狭く、脱腸の状態が戻らなくなることがあり、この狭い空間で腸が締め付けられ血流障害をきたし、痛みを伴います。ヘルニア嵌頓の場合は緊急手術が必要です。
ヘルニア嵌頓状態ではお子さんは痛みで機嫌が悪くなり、号泣します。また膨らんだ部分は硬く、触ると非常に痛がります。このような時には速やかに小児の手術が可能な救急病院を受診してください。
精巣は胎児期にお腹の中で発生し、その後、陰嚢内に下降してきます。下降の過程で正常な位置にまで到達せず停留してしまう状態です。
停留精巣の場合、精子を作る細胞が徐々に機能を失い、不妊の原因になることがあります。また精巣腫瘍のリスクが上昇する可能性があります。
3ヵ月・6ヵ月・1歳健診で陰嚢内に精巣が触れないと指摘され、発覚することがあります。
親御さんはお子さんとお風呂に入る際、両側の精巣が陰嚢内にあるか定期的に触って確認してみましょう。停留精巣の場合は、生後半年~2歳までに手術を行うのが望ましいです。
停留精巣とは異なり、陰嚢内まで精巣は下降しているが、陰嚢底に固定されていないため精巣の位置が変動する状態です。触診などの診察の際、お子さんは泣いていることが多く、腹圧(お腹に力を入れる)がかかった状態で、陰嚢内に精巣が触れなくなることがあります。一方で、リラックス時には陰嚢内に精巣が確認できることが停留精巣との大きな違いです。
親御さんはお子さんとお風呂に入る際、両側の精巣が陰嚢内にあるか定期的に触って確認してみましょう。お風呂(リラックス時)では精巣が触れるのに、健診や病院で診察を受けた際に、陰嚢内に精巣が触れないのは、移動性精巣です。
移動性精巣の場合、精巣が固定されていないため精巣捻転のリスクが高くなります。また成長と共に、身長が伸びること・精巣を挙上させる筋肉が発達することで5歳頃に停留精巣に移行してしまうケースも少なくないです。
精巣が捻じれることで、血管が締め付けられ精巣への血流が遮断されてしまう状態です。出生前後から新生児期と、思春期に発症することが多いとされています。左側に多く、冬場に、また夜間睡眠中に突然発症することが多く、激しい陰嚢痛を自覚します。また陰嚢痛の他に、下腹部の痛みや吐き気などの症状が出現することもあります。捻じれの程度にもよりますが、迅速に手術を行い精巣の捻じれを解消しないと、血流障害により精巣が壊死を起こしてしまうことがあるため、適切な診断および治療介入が必要となります。
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